バリアフリーでないとどうなるか?
先日、愛知室内オーケストラの定期演奏会に行ってきた。
https://www.ac-orchestra.com/20220515-aco33
今年4月から、定期会員になったのに、4月早々に入院してしまい、今回になってやっと行けた。(妻の介助付きだが)
しかし2曲目のマーキュリーの途中で私は体調が悪くなり退出した。
まだ完全に体調が回復しておらず、その覚悟で行ったので、躊躇なく退出した。(強調しておくが、演奏はとてもよく鳴り、いい調子だったので、この後の演奏も非常に素晴らしいものであったと思う。)
しかし、ここから思わぬ苦難が私に待ち受けていた。
まず、ホールから出口に向かうのに階段を8段くらい駆け上らねばならなかった。
楽章の間を縫って、扉を開けてホールから出た。すぐ座りたいと思い、通路に椅子を探したがどこにもない。あれ?
係の人に尋ねたら、椅子は階下のロビーにしかないという。
しかもエレベータに乗るためにはさらに階段で降らねばならないのだ。エレベーターが必要な人に階段を使わせる構造とは・・・理解できない。気が遠くなった。
気力がなくなりかけながらも、なんとかエレベーターでロビーまで降りてようやく椅子に座り、呼吸を整えた。
とりあえず水分を補給しないといけないとウォータークーラーで水を飲もうとしたら、コロナ感染予防のため使用不可。
仕方ないので自販機で水を買おうと思ったら見当たらない。係の人に尋ねたら、建物の外にしか自販機はないという。建物の出入り口はさらに階下。そんな気力はない。それに外に出たら、別席で聴いている妻とどう待ち合わせていいのか・・・。
インターミッションで妻がロビーに降りて来た。脈拍を測ってもらったら、結構速かったので、そのまま帰宅することにした。
ロビーから1階降って出口に向かおうとしてエレベータを使おうとしたが、ボタンを押しても階下に行けない・・・。つまり出口には行けない設定にしてあったのだ。
係の人に言えば設定を変えてエレベーターで降りられそうだったが、係の人を探すのもいちいち面倒くさい。
だんだんヤケになってきて、エスカレーターで降ろうとした。しかし、エスカレーターも登りしかない。これも係の人に言えば降りの設定にしてくれるだろうが、もう出口は目の前に見えていて待っていられない。妻に抱えられて一気に階段で降りた。
ここまで徹底して「いちいち、係の人にこちらから言わないとバリアフリーにはならないホール」に絶望した。バリアをわざわざ作ったと言われても仕方ない構造である。
ホール内はおそらく係の人に願い出れば、エレベーターも設定を変えて出口まで通せる設定にできるだろうし、エスカレーターも係の人に言えば、逆転させることも容易だろう。階段で背負ってくれるかもしれない・・・かもしれないが、何人の係の人に何度頼めばいいのだろうか。さらに係の人がどれだけ迅速に対応するかなんてわからない。すぐに対応してもらえればいいが、待たされるならば、自分の足で行きたいのだ。
その後最寄りの駅から地下鉄に乗ってなんとか帰宅したが、地下鉄のエレベータも途方もなく遠いところに一箇所しかないし、エスカレーターもくだりのあるところは皆無に等しかった。
正直、健康不安の大きい私には、今後このホールで音楽を楽しむことはできないと思う。
2024年2月に閉館予定なので、今後は改装もされないであろう。(買い取ったスポンサーが改装してくれると良いが、バリアフリー解決には困難な印象)
素晴らしい響きのホールだが、むしろこのバリアだらけの構造ゆえに、客足が遠のいて、閉館したと私は考えている。
このホールのバリアフルな状態では、どんなにいい響きだろうが、どんなにいい演奏をしようが、客は来ない。
日本の現実はとっくに高齢社会なのである。
ハイスペックなものを作れば、それで評価され、客は来るいう発想が、全てをダメにしている。それに数十年先の高齢社会も予想できたはずである。
しかし、その場限りのハイスペックにこだわり続けた。この発想で日本社会がダメになった。その表れのひとつがこのしらかわホールであろう。今私はまさに「身をもって」それを体感したのだった。
だからみなさんにもぜひこのホールを今のうちに体験してほしい。
ちなみに、このバリアだらけのしらかわホールは、たかだか28年前に天下の三井住友海上が作った。
驚くべきことに、その時すでにバブルは崩壊しており、当時も高齢化社会と言われていたんだぜ!
開演の前に購入したCD。愛知室内オーケストラメンバーによる木管五重奏。
これが大変な名演奏だった。録音も大変素晴らしく、純セレブスピーカーで聴くとさらに感動できる。今後もいい演奏に期待したい。